百合展2017、最近面白かった百合とか。

池袋マルイで開催中の百合展に行ってきた。昨年と同じく、展覧会というよりは販促のイベント。まあ無料なんだし、文句を言う筋合いではない。作家自らの手描きポップやらスケブやらが掲示されたりして、これはこれで楽しいイベントである。

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人とすれ違うことすら困難だった去年のせまーいスペースと違い、きちんと催事場で行われていたため余裕があり(むしろ展示物が少なく感じるくらい)ゆっくりと見ることができた。百合の注目度が上がっていると言うことだろうか。だったら嬉しい。

それよりも、個人的に驚いたのは男性の少なさだ。会場がマルイってことは差し引きする必要があるだろうけれど、僕が訪れた時はおよそ3:7くらい。

『やがて君になる』、『あのキス』といった今最も輝いている百合作品はいずれも男性誌の掲載。そうである以上、もう少し男性ファンの姿を見かけてもいいとは思った。まあ、人のことは言えないけれど、男のファンは黙って単行本を読むだけの人が多いからね。

 

しかしまあ、『オトメの帝国』『柚子森さん』などなど、今や百合の話題作はことごとく男性誌を舞台に発表されている。ほんの数年前は、『百合姫』といくつかのアンソロジーをおさえておけば流行りの作家を網羅できていたのに。媒体の質が上がったからか、絵のうまい作家さんが多くなっていることも近年の特徴だろう。

元祖たる『百合姫』はといえば、月刊化して華々しくリスタートを切った…かというところで人気作家くずしろさんが突然連載『犬神さんと猫山さん』を終了させるという不安な雲行き。ギャラが安いのか、編集の質に問題があるのか。この雑誌は名前が通っている割に、エース作家の定着率がどうにも悪い。

とはいえ、面白い作品がまだまだあるのも事実。特に月刊化に合わせてスタートした新連載は比較的読ませるものが多く、中でも未幡「私の百合はお仕事です!」が出色である。

「古き良きミッション系お嬢様学校、を模したコンセプトカフェ」が舞台というひねりの効いたラブコメ。主人公はあくまで常識的な女子なので、カフェで演じられるテンプレートな百合シチュエーションがさっぱり吞み込めず、そうとは知らずに波乱を起こしてしまう。そんな話だ。

マリみて」的な世界観はあくまでフィクションの絵空事として扱われるので、登場人物は「仕事」の時とそれ以外で別々のキャラを持っている。特に成り行きで主人公の「姉」になるヒロイン(?)美月は複雑で、表面上は「優しいお姉さま」だが、裏では主人公に対して敵意をむき出しにするというキャラクター。一方の主人公も、可憐な見た目に反して根は図太くて腹黒い、という人物。お互いに水と油な二人が起こすドタバタが楽しい。

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この二人の関係性をどういう風に描いていくのか。続きが気になる。

 

未幡さんといえば、既刊の『少女2』なんかはまさしくテンプレートな百合世界に忠実な作風だった。その作家がこういうメタフィクショナルな設定を描くのも興味深い。「ショウ」としての百合関係は当然喫茶店の客の視点込みで描かれており、男性読者の視点が優しく確保されているというのも最近の百合っぽさがある。

キャラクターの演技も、(コメディだから当然ではあるが)今までの作品とは違い、喜怒哀楽のコントラストがくっきりと強調されていて、総じて男性読者のツボをおさえているという印象だ。単純に、絵もそれなりに上手くなっていて随分読みやすくなったな、と感じる。単行本化が楽しみ。